平成19年度 憲法 東京都庁・特別区

問題

日本国憲法に規定する信教の自由又は政教分離の原則に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。

1 憲法は信教の自由を絶対無制限に保障しており、宗教行為として行われた加持祈祷は、その行為が他人の生命や身体などに危害を及ぼす違法な有形力を行使し死に致した場合であっても、信教の自由の保障の限界を逸脱したものとまではいえないとした。

2 法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした宗教法人について、宗教法人法の規定に基いて行われた解散命令は、その信者の信教の自由を侵害するため、憲法に違反するとした。

3 親しい者の死について、他人から干渉を受けない静謐の中で宗教上の人格権として認め、護国神社が殉職した自衛官を妻の意思に反して合祀したことは、当該妻の法的利益を侵害するとした。

4 市が、遺族会所有の忠魂碑を公費で私有地に移転、再建し、その市有地を遺族会に無償貸与した行為は、忠魂碑は宗教施設であり、遺族会も宗教上の団体と認められるため、特定の宗教に対する援助、助長、促進にあたり、政教分離の原則に違反するとした。

5 県が、神社に奉納する玉串料等を公金から支出したことは、その目的が宗教的意義を持つことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、憲法の禁止する宗教的活動に当たるとした。

解説

1 加持祈祷事件として有名な判例です。加持祈祷によって死亡してしまい、遺族が祈祷師を訴えた事件です。判例は、人身に被害を与えた以上、宗教の自由が認め られる範疇を逸脱しているとしました。 よってこの事件での加持祈祷は宗教の自由で保障されない行為であるとしました。本肢は誤りです。

2 某宗教法人が90年代に大事件を起こしましたが、その後、その宗教団体に解散命令があったときに、解散命令が不当であると宗教団体側が提訴した事件です。 結果は合憲判決、国の勝ちです。当該宗教団体は既に他の宗教団体名で活動していたことから、解散したとしても影響は限定的であるということで、国の言い分 を認める判決になりました。さらに、宗教団体の本来の目的を著しく逸脱したとも判示しています。つまり解散となったわけです。本肢は誤りです。

3 昔から帝国軍人も自衛官も、殉職した場合は護国神社や靖国神社に合祀されてきました。この事件は、殉職した自衛官の妻が、殉職した自衛官を勝手に神社で合 祀することは、神道を信仰しない妻に対する神道の押し付けであるとして妻が提訴したものです。判例は、宗教の自由を妨害されない限り、他の宗教には寛容で あるべきだとしました。軍では殉職者を神社で合祀することが慣例として行われてきたので、それを一つの宗教行為として尊重すべきだということです。それは 妻の信仰の自由を妨害しているわけではないので、妻から見た他の宗教、ここでは神道に対して寛容であるべきだと判示しています。よって本肢は誤りです。

4 遺族会とは殉職した軍人の家族で構成される団体です。遺族会は自民党を支持しており、中間団体(圧力団体)としての側面を持っています。なので、それが気 に食わない人が遺族会に楯突いてきて訴訟になったという事件です。判例は、遺族会は戦争で殉職した遺族が集まった団体であり、宗教団体ではないとしていま す。また忠魂碑については、慰霊を行うことは世俗的なもの、つまり世間一般にみられるものであり、宗教上のものではないとしています。つまり遺族会も忠魂 碑も宗教上のものでないから、政教分離規定に違反するかどうか考える必要もなく合憲となりました。本肢は誤りです。

5 愛媛県知事が公金を使い、神社に玉串料を奉納したことについて、政教分離規定に違反すると訴訟を起こされた事件です。この事件は違憲判決となりました。つまり地方自治体が神社に対して公金を拠出することは違憲であるとしました。よって本肢は正しいです。

政教分離についてはお金がからむと違憲になりやすいという暗黙の基準があります。ちなみに、この愛媛玉串料訴訟は地方自治体の公金の使い道が問題とされたも ので、国庫の使い道ではないことに注意しましょう。実際、内閣総理大臣は靖国神社に玉串料を奉納しています。これは合憲かどうかというより、そもそも、国 のお金の使い道について訴訟を起こしていちゃもんをつける手続きがないから訴訟になっていないだけです。つまり、国務大臣は玉串料を奉納できるし実際に現 在も奉納しているが、それは合憲とも違憲とも判示されていない、ということです。

解答