難易度の割に公的効果は大きい情報処理技術者試験

情報処理技術者試験は国家試験においてとても優遇されています。

例えば弁理士試験は選択科目として、各種専門科目を受けなければなりません。それは電気電子だったり建築土木であったり様々です。

実は弁理士試験の受験者のうち半数以上が情報処理技術者試験を利用して免除を受けています。応用情報技術者試験以上の資格ならどの資格でも免除として使えます。

大学院の修士論文の考査でも免除できますが、はっきり言って手続きが面倒です。さらに難易度の観点からしても、建築士や電気主任技術者の資格を取得するより情報処理技術者試験は遥かに楽です。

資格には二種類あって、受からせるための試験と落とすための試験です。例えば弁理士試験は落とすための試験です。司法試験予備試験や公認会計士、税理士試験も落とすための試験です。

ですが情報処理技術者試験には独占的業務がありません。国家試験ですが取ったからといって何か特定の業務を独占的に行えるわけではないのです。単に知識が一定レベルに達していることを公的に証明する検定試験と言えます。

だから受験者にとって魅力が少ないのです。もし仮に、情報セキュリティスペシャリスト資格をもっていないと個人情報を電磁的記録として保持できない、と法令で定められたら情報セキュリティスペシャリスト試験の受験者が殺到するでしょう。なぜならシステム上で個人情報を管理することは官公庁から大企業中小企業までほぼ必ずといっていいほどやっていることだからです。

でも現実はそうではありません。情報処理技術者試験に受かってなくても世の中に存在するありとあらゆるIT業務を行うことができます。だから情報処理技術者試験を受けることに魅力を感じない人が多いのです。

それは試験を所管している経済産業省や実施している情報処理推進機構も良く知っています。そこでどうするかというと、合格者に実力以上の「公的な」優遇措置を付与するのです。

「公的な」というのが重要で、例えば民間企業に対して「応用情報に受かった従業員の基本給の10%を手当として加算するように」なんて強制することはできないわけです。そんなことをしたら企業は従業員に対して「情報処理技術者試験を取らないように」と周知徹底するでしょう。司法試験ならまだしも、情報処理技術者試験にはそこまでの力がないからです。

ところが、試験を作っている官公庁側ならこういうことができます。同じく経済産業省の外局である特許庁が実施している試験に弁理士試験がありますが、その専門科目として”応用情報以上を免除”とすると、「応用情報程度でも免除してもらえるのか」と受験者が殺到するわけです。つまり国なら資格の実力以上の価値をつけることはいくらでも可能だということです。実際に、情報処理技術者試験は簡単な割には国家資格の中ではその位置づけが極めて高く設定されていると言えます。

民間企業では役にたたなくても、難関国家試験で免除したい人、公務員で資格を取得したい人にとっては、情報処理技術者試験に合格することはとても大きなメリットがあると言えます。