情報セキュリティマネジメント試験2016秋期、合格率70.3%と大幅減

2016年11月14日に第2回情報セキュリティマネジメント試験の合格発表がありました。

情報セキュリティマネジメント試験は5,700円で受験できる国家資格です。難易度的には宅建よりも簡単です。

同時に各種統計資料も公表されました。それを元に情報セキュリティマネジメント試験の受験者層や難易度などの実態に踏み込んで行きます。

受験申込者数は第1回の21,691人より微増の22,186人
受験率も第1回の82.8%から1.2ポイント増加し84.0%

今回の受験者数は18,630人でした。申し込んでも受験しないでサボる人が多い情報処理技術者試験において、情報セキュリティマネジメント試験は受験率80%以上をキープしておりなかなか高いと言えます。

ただ、受験者数の絶対数は他の区分にくらべてかなり少ないです。

情報セキュリティスペシャリスト試験よりも少ないのはちょっと情報セキュリティマネジメント試験の魅力がないと判断されていると思います。

基本的に簡単な試験ほど受験者数が多く、難しい試験ほど受験者数が減っていくものですが、情報セキュリティマネジメント試験は基本情報より簡単なのにもかかわらず圧倒的に少ないです。

例えば2016年秋期の試験の申込者数は、基本情報は75,095人、応用情報は52,845人、最後の試験となった情報セキュリティスペシャリストは32,492人なのにもかかわらず、情報セキュリティマネジメント試験はたった22,186人です。

昔のITパスポートのように7万人試験を目指していたはずが、情報セキュリティマネジメント試験は名前からして難しそうなため、スイーツ色が打ち出せずに宅建や簿記のような人気が出なかったのでしょう。

第2回試験の合格率は第1回試験の88%から大幅減の70.3% 受験プロ層が大幅減

第1回目の試験は私も受験しましたが、見るからに受験プロのような人達ばかりでした。すでに高度試験を持っているのに冷やかしで受けに来ていたわけです。

予備校関係者も多数受けていたでしょうが、予備校関係者は初回のみならず常に毎回受けているようなものなので今回も受けていたでしょう。

楽々合格できる冷やかしの初回記念受験層は、1回目を受験して合格できてしまったので、2回目は受験しなかったと考えられます。

それでもまだこの合格率は異様に高いと言えます。

ITパスポート試験でさえ、まだCBTでないペーパー時代の初回試験では合格率72.9でした。それが第2回目には50.7まで落ち着いていました。それと比較したら情報セキュリティマネジメント試験はザル中のザル試験と言えます。もう少し難易度を上げて絞ったほうがいいのではないかと私は思います。

第1回目の試験は90~100点が最も多く異様だったが、第2回目は70~79点が最も多くなる

初回の情報セキュリティマネジメントは異様でした。90~100点帯が最も多く、点数が下がるに連れて人数が少なくなるというまるで90~100点を平均として正規分布しているようなものでした。

以下の表は第1回目の情報セキュリティマネジメント試験の得点分布です。90~100点が7,281人と最も多くなっています。

sg-2016-04-distribution

そして以下の表が第2回試験の得点分布です。最も多いのが70~79点の4,582人ですが、80~89点もほぼ同数なのでこのあたりに平均的な厚みがあると言えます。本当は60~69点か、50~59点あたりが最も人数が多くなる試験が理想なのですが、情報セキュリティマネジメント試験はあまりにも簡単かつ、情報処理技術者試験は素点方式の絶対評価試験なのでこのようになってしまうのでしょう。

sg-score-distribution-201610

合格率が下がって、いびつな得点分布が解消されたのは最初だからと受けに来た冷やかしの人が第2回目試験を受験しなかったからだと言えます。

予想より下がらなかった合格者平均年齢 たった1歳の若返り

意外だったのは合格者の平均年齢がほとんど下がらなかったことです。

以下の表は第1回目試験の合格者平均年齢です。40歳というのはITパスポートより10歳ほど高いです。

sg-2016-04-age

そして次の表は第2回目の2016年秋期試験の合格者平均年齢です。

応募者年齢からしてすでに下がっているのは受験プロ層が撤退したからでしょう。合格者年齢も若干下がっていますが、ほぼ40歳と見ていいです。

sg-2016-10-age

ITパスポート試験の30.1歳と比べたらかなり高いことがわかります。

それでも基本情報に比べたらITパスポートの平均年齢は高いです。それはITパスポート試験は社会人が多く受ける試験だからです。就活前の文系学生、さらには一般職を目指す女学生、加えて40代のベテラン社会人も受験するようなのがITパスポート試験なので平均30歳程度になっていました。

一方で、情報セキュリティマネジメント試験は、学生、特に一般職を目指す女性にほぼ見向きされず、ほとんど社会人が受ける試験になってしまっています。

この情報セキュリティマネジメント試験はITパスポート試験と同じで、職場の昇級の要件に資格が足りず、とにかく何でもいいから簡単に合格できる資格を取り揃えなくてはいけないといった出世コースからはずれた人に対する救済措置的な側面が強いです。

本当は簡単なのに名称で敬遠されている情報セキュリティマネジメント試験

今回の統計資料からも、情報セキュリティマネジメント試験の人気があまりでていないということがわかったわけですが、それは社会人ぽさを押し出しすぎているから学生が受けに来てくれないという点があります。

これはもったいないことで、実際受けてみれば情報セキュリティマネジメント試験はITパスポート試験よりも簡単な部分があります。

午前問題はITパスポート試験よりもテクノロジが薄いです。ITパスポートは2進数計算、2の補数1の補数、データ構造が普通に出題されますが、情報セキュリティマネジメントはそんなものはでません。完全に文章題です。日本語の問題文をよんで日本語の肢を切っていくというまるで法律系政治系の公務員試験問題のようです。これはその場で考えて解くようなものではなく、「~というものを知っていますか?」という問題なので暗記問題のようなものです。基本情報のようなその場で計算する必要があり、暗記だけではとけない試験とは異なります。

午後問題も日本語の読解問題です。特に技術的なことを知っている必要はありません。パソコンやスマホを普段から使っていて、セキュリティ面を意識しているだけで十分です。

まとめ:情報セキュリティマネジメント試験は学生に不人気なベテラン社会人向け試験

情報セキュリティマネジメント試験は就活前の学生にほとんど見向きされていないと言えます。技術的な難易度はITパスポートより低いので、文系理系問わず受験さえすれば合格できるものなのですが、業務臭がしすぎるせいか知名度のせいか学生から好かれていないようです。

私は以前別掲した記事して指摘していますが、学生の頃にこの試験名をみたら、マネジメントという文字をみてあまり受けたくないなという印象を持ったと思います。

私は理系の情報系だったので「情報セキュリティ」という言葉には全く抵抗はありませんでした。でも一般の人からみたら「情報」というのは他人を出し抜くための諜報的な暗いイメージがあるのです。「セキュリティ」も犯罪とからむ概念でありあまりいいイメージはありません。

一方でITパスポート試験は、「IT」というのが文系でWebに興味がある意識高い系をひきつけ、パスポートというのが一般職志望のスイーツ系をひきつけるという、多くの受験者を集客できる名称でとても成功している試験です。やっぱり名称は重要です。